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福祉のすそ野広げる「楽しさ」

やってみようと思える仕掛けづくり

 「日本人は全員、地域福祉の推進に努めることが決まりです」と言われたら、どう感じるだろうか。実はこれは、社会福祉法第4条に明記されている内容である。少子高齢化や人口減少、生活困窮者や孤独・孤立への支援が求められる中、世代や高齢者・障がい者・子どもなどの属性に関わらず、地域全員が参加し、協力して支え合う仕組みづくりが目指されている。

 では、実際はどうだろうか。「福祉が大切」「協力し合おう」「参加しても良い」には、多くの人が賛同しているデータがあるが、「時間やお金に余裕があれば...」「どうやれば良いのか...」と感じる人も多い。つまり、方向性には賛成だが、主体的な参加や参画までには至っていない人が多い。

 これまでの地域福祉の参加は、町内会・自治会への加入に代表される、居住を前提とした半ば強制の側面もあった。しかし近年は、核家族化や単身世帯者の増加など、家族機能や生活スタイルが変化している。また、福祉教育に代表される、「困っている人のために」という「正しさ」による学習や啓発、地域福祉計画の策定の参画に代表される、具体的な実践場面への参画による手法もある。しかし、これらだけでは主体的な参加が増えているとは言い切れないため、新たな方法が求められる。

 筆者は「楽しさ」という概念から、福祉への参加が広がる可能性を主張してきた。地域福祉およびまちづくり分野における「楽しさ」とは、遊び心がある、きっかけが多様である、互いの差異を認めて承認し合う、新しいことに取り組む、興味・関心が高まって夢中になる、目的を志向し過ぎない、という要素から成り立つ。個人化が進む時代において、一人一人の興味関心や想いを実現し、生かすアプローチの方法も検討されて良い。福祉への関わり方の焦点を、「正しさ」から「楽しさ」にずらすことが、福祉への関わりやすそ野を広くすることにつながる。筆者自身も、学生時代のボランティア活動や震災復興支援活動、現在取り組むまちづくりNPOの実践においても、仲間との交流、新しいアイディアの実現、好きなことを選べる、といった楽しさを感じるから参画できている。

 また、福祉現場の職員不足は大きな課題である。その手立ての一つとして、ロボットや機器の活用が進められている。食事や入浴などの介助業務や、記録や情報共有、清掃、運搬などの間接的な業務の負担軽減まで、多様である。福祉施設から地域福祉まで、幅広い分野で新たなテクノロジーの開発、あるいは今あるテクノロジーを福祉の現場で活用していく工夫が、より一層求められる時代になる。「やらされる・こなす業務」が減り、利用者との関わりに時間を使えるようになること、工夫やアイディアが生かされるようになることは、支援の質や福祉の仕事の魅力の向上、やりがいや活気につながる。

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福祉経営学部 浅石裕司 助教

 「やってみよう」「関わってみよう」と思える、想いを生かす多様な仕掛けづくりが、福祉現場に求められる。

浅石裕司 福祉経営学部助教

※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2025年12月16日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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