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多職種連携プロジェクト:在宅医療・介護連携推進のためのワークショップのモデル開発

多職種連携プロジェクト:在宅医療・介護連携推進のためのワークショップのモデル開発

白尾 久美子 看護学部 教授

※所属や肩書は発行当時のものです。

多職種連携プロジェクトが目指すもの!

 地域包括ケアは、重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、高齢者に焦点をあてて取り組まれています。しかし、地域社会においては、認知症や様々な障害を持つ高齢者への介護にとどまらず、病気を抱えながらの療養、育児困難、失業、貧困、虐待やドメスティック・バイオレンスなど、様々な年代の人々が多様な生活課題を抱えながら生活をしています。そのため高齢者のみではなく、0歳から100歳までの誰もが、住み慣れた地域で生活できるよう、保健・医療・福祉に関わる様々な機関、組織、専門家が共に協働しながら、支えあえる多職種連携が重要となります。

 このような背景の中、医療と介護を必要とする人々に対して、市町村が中心となって医療・介護の関係機関が連携して支援ができるように、2015年に「在宅医療・介護連携推進事業」が制度化されました。「在宅医療・介護連携推進事業」には、いくつかの事業項目があり、その中に医療と介護関係者の多職種研修が含まれています。

 そこで私達のプロジェクトチームは、多職種研修に着目しました。知多半島の5市5町を対象に、各市町村が地域の状況に合わせた多職種によるワークショップ(以下WS)の方法を、市町村を越えて、行政や保健医療福祉の関係機関が共同で開発するプラットホームの構築を検討します。

多職種連携プロジェクトの歩み

 多職種連携プロジェクトは、2018年にスタートしました。

 2018年の取り組みとして、知多半島5市5町の在宅医療・介護連携推進のための多職種研修の現状について、各市町村で多職種研修を担当する方を対象に調査し、研修を実施するうえでの取り組むべき課題を明確にしました。課題は、①参加者の拡大(特に医師、医療者、障害者支援事業所など)、②取り組むべきテーマ(介護職へのハラスメント、生活困窮者への対応、意思決定支援など)、③内容と研修目標(グループワーク時間の確保、医療・介護の知識不足の改善など)です。

 多職種研修の現状調査を基に、2019年から多職種によるWSを開始し、2022年まで計8回、開催しました。

多職種によるWSの企画・運営

 多職種によるWSの企画と運営は、プロジェクトメンバーで実施しました。WSの開催にあたっては、5市5町の「顔の見える関係」を越えた「腹の見える関係」となり、参加した方が何らかのお土産をもって帰ってもらい、各市町村に活かしてもらえることを目指しました。

 WSの企画は、開催前の事前打ち合わせにおいて、テーマと目標を設定し、テーマに即したWSの内容を決め、スケジュールとメンバーの役割を検討しました。

 初回のWSの参加者は、各市町の担当課から行政内外を含めた方の推薦を依頼し、その他、保健所・保健センター、訪問看護ステーション、社会福祉協議会、包括支援センターのケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカーなど、多職種な参加者をメンバーで人選しました。WSを重ねるごとに、固定メンバーに加えて、新規の参加が得られるようになりました。参加していただいた方の背景は、行政、社会福祉協議会、保健師、看護師、ソーシャルワーカー、大学教員など、まさに多職種でした。

 WSの開催後には、事後の振返りを行い、新たな気付きが得られ、次回のテーマを決定していきました。

開催年 テーマ
2019 自己紹介を兼ねた各市町村の特徴の紹介
2019 市町村を越えた多職種研修に取り組む課題
2019 入退院時の問題への多職種間の視点の違い
2020 新型コロナウイルス禍での活動の共有
2021 広域的な課題に取り組む事例から考える市町村を越えた多職種連携
2021 領域・職種・立場による連携/つながるの違い
2022 医療と福祉(介護)との壁~事例を通じて連携の課題や工夫を考える~
2022 8050+10代の父子家庭の事例から各職種が考える支援と理由

 WSで取り上げたテーマは、各市町村の多職種連携の現状から始まり、市町村を越えた連携のあり方に発展し、さらに、具体的な課題へと焦点化されました。見えてきた課題は、医療と福祉(介護)には壁があるのではということです。壁とは何かを探るために、医療と福祉(介護)との連携について、事例を通して考えるWSを企画しました。

 近々のWSでは、行政や保健医療福祉の関係機関のそれぞれの役割や立場から、事例の登場人物への焦点の当て方、必要と考える支援が可視化され、お互いで共有する機会となりました。

WSから見えてきたこと

 WSを4年間、継続して実施してきました。開催してきたWSでは、連続性の中で新しいつながりや発見が生まれ、継続することの重要性を実感しました。知多半島の5市5町という異なる成り立ちをもつ地域まとまりが、互いに「依存」しながら、多職種・多業種・多自治体の「連携」を確認し、学び合う「多職種によるWS」へのニーズを確認することができました。「芽」を出している課題やテーマについて、力を合わせて「知恵を抽出して共有していくこと」「継続する過程」そのものに価値があることに気づく機会となりました。

多職種研修プロジェクトメンバーの紹介

 最後に、プロジェクトメンバーを紹介します。2022年からリーダーをさせていただいている白尾久美子(日本福祉大学看護学部)看護師免許有。メンバーは五十音順に、市野恵(NPO地域福祉サポートちた代表理事)、岡本一美(日本福祉大学社会福祉学部)NPO地域福祉サポートちた元代表理事、上山崎悦代(日本福祉大学福祉経営学部)保健・医療ソーシャルワーク、藤井博之(長野大学社会福祉学部)医師で初代リーダー、丸山陽子(日本福祉大学看護学部)看護師免許有の計6名です。プロジェクトメンバーも多職種となっています。

白尾 久美子 看護学部 教授

※2023年3月15日発行 日本福祉大学同窓会会報130号より転載

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