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歴史的資源を活用したまちづくりへ

「新修高浜市誌」を活用した取り組み

 高度経済成長時代、地域が変化するなかで地域の歴史を掘り下げる自治体史の編さんが各地で盛んに行われました。今回取り上げる高浜市もその一つです。1966(昭和41)年に『高浜町誌』が、70(昭和45)年に町から市へ移行し、76(昭和51)年に『高浜市誌』が刊行されました。瓦の町・高浜が大きく変わり始める時期です。

 

 あれから50年、瓦産業に従事する人はずいぶんと減りました。かつて至るところにあった窯や煙突は住宅地に変わりました。「高浜のスズメは黒い」と煙と煤で悩まされた時代は今となっては思い出ばなしです。この50年で高浜はどのように変わったのか、を明らかにするとともに、先史・古代から続く高浜の歴史をもう一度見直そうと、市誌編さんが始まり、私もそのメンバーに加わりました。コロナウイルスにより行動が制限されるなか、2021(令和3)年11月、『新修高浜市誌 高浜市のあゆみ』が刊行されました。

 

 高浜市では、編さん事業が終了した後も、古代・中世部会、近世・近代部会、現代部会、文化財部会、生活誌部会の全部会の部会長が残り、編さん委員会は刊行された市誌の活用を検討する場になりました。新しい市誌は資(史)料編がない通史のみの一冊本です。編さん中に多くの史資料を調査し、その成果は継続して『高浜市のあゆみ資料』として刊行されています。その資料集と関連させた報告会の開催、「たかはま歴史散歩」「古文書てほどき講座」の実施など、さまざまな企画が始まりました。

 

 また、刊行以来これまで5回にわたって市誌を読む会が開催されています。市誌の執筆者たちが自らの担当部分を地域の人々に解説する企画です。このような市誌の活用もあり今年11月、市誌が増刷されました。自治体史の増刷は珍しいことです。自分たちが編さんした本の活用を自らが考えることで、読んでほしいポイントを提示することができます。執筆者と地域の人々が市誌を通じて対話することで、編さん時には知られていなかった新たな歴史の発見につながります。

 自治体史編さん事業は、博物館や公文書館に引き継がれ、史料目録の刊行や展示などに活用される場合が多いです。2020(令和2)年に終了した愛知県史編さん事業は、専門職員とともに業務が愛知県公文書館に引き継がれ、収集史料の公開や企画展示が行われています。高浜市のように編さん委員会を残し、執筆者とともに本誌の活用を考える方法もあると思っています。いずれにしても、自治体史を刊行してそれで終わるのではなく、各自治体は、地域の特徴を踏まえ、どのような生かし方があるのかを考えることが大切です。さらに、地域の人々が中心となり、歴史的資源を生かしたまちづくりを行うことが望ましいと考えています。

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曲田 浩和 経済学部教授

 

曲田 浩和 経済学部教授

※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2023年12月14日)欄に掲載されたものです。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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